トヨタとしては新規開発したD4-SⅡをスバルに開示してよいのかという議論もあったが、この86に関しては特命プロジェクト扱いのために大きな抵抗なくプロジェクトが進行できたという背景があった。
D4-SⅡの水平対向エンジンへの適合、キャリブレーションはスバルが担当し、目標馬力をクリアした。もちろん、古典的な高回転エンジンではなく中低速トルクを厚くした上での200psという出力である。
なお動力性能は0-100km/hが7.3秒、0-400mが15.3秒程度。スバルは、エンジンの搭載位置を極限まで下げるために、等長等爆エキゾーストマニホールドを約15mmほど上下方向に圧縮して扁平化して対応。またオイルパンも15mm圧縮されたが、このため横Gでのオイルの偏り、低重心化による左右のシリンダーヘッドでのオイル滞留が問題となったが、オイル通路の改良、さらにオイルパンへのバッフル板の追加で解決している。
補機ベルト駆動用のプーリーは樹脂製のプーリーが採用されている。これは軽量化が主目的だ。
なお蛇足ながら、低い位置にエンジンを搭載したため、左右のシリンダーヘッドの点火プラグの位置は完全に左右のフロントサイドフレームに位置にあるため、点火プラグの交換は水平対向式エンジンに習熟したベテランが独自の特殊な工具を使用する以外はスペースの狭さでほとんど無理と考えた方がよい。 オイルの容量はFB型と同様にオイルカートリッジを含んで5.2L、エンジンのみで5.0Lとなっている。実際のオイル交換時は4.8L程度で十分だろう。
FR用のコンポーネンツとして、トランスミッションはアイシンAI製のAZ6型6速MTとアイシンAW製の65SN型6速ATが搭載されることになった。もちろんスバル・エンジン用にハウジングのフランジが専用設計されている。
AZ6型は、かつてはアルテッツア、S15型シルビア、マツダ・ロードスター、RX-8(前期型)などに採用されている中容量FR用のMTだ。このトランスミッションはもともと5速MTを6速用に設計変更したもので5速が直結という変則的なデザインであり、86/BRZ用のコンポーネンツの中ではもっとも基本設計が古い。
一方の65SN型6速ATは、中容量の6速ATをベースにスポーツカー用にふさわしいクイックな変速、自動ブリッピング機能なども盛り込まれ、ダイレクト感のあるATに仕上げられている。MTに関しては、今回の86/BRZ用にはスポーツカー用にショートストローク化することと滑らかさの両立を狙って2年前に1~3速をトリプルコーンシンクロにするなど大幅な改良を加えているが、ダイレクトシフト機構や変速ギヤが油面を攪拌する完全なウエットサンプ潤滑であるなど現代的とはいえない点もある。
<トヨタ86/スバルBRZ 6 へ続く>