リヤディファレンシャルは、スバルが採用してきたR180型では容量が少なく、トヨタ・マークX用が採用された。これも設計は古く、ギヤの当たりがよく馴染むまでには約8000km程度の慣らし走行が推奨される。
86/BRZのサスペンションはフロントがストラット式、リヤがマルチリンク式で、フロント・ロアアームの配置などに若干の違いはあるが、形式的には従来型のインプレッサ、レガシィと同じだ。
開発の過程で、重心の低さがそのままポテンシャルの向上に直結し、恩恵を受けたのがサスペンションといえる。重心の低さによりコーナリングでは荷重移動が小さくなりロール剛性が高められるので、それだけスプリング、ダンパーやスタビライザーの負担が小さく、固める必要がないのだ。そうしたセッティングでもロールが少なく、しかも優れたロードホールディングが実現することができる。
イメージ的には、ステアリングを切った瞬間にコーナリングが始まり、ロールが後から発生するという、一般のクルマとは逆のフィーリングで、実際以上にステアリング・レスポンスが高く感じられる。
またそれと同時に、リヤ・サスペンションのグリップ感、存在感が高められている。開発者は、決してリヤが流れやすいサスペンションを作っているのではなく、あくまでも4WDの前後トルク配分を0:100にしたイメージと語っている。
なお周知のように、86とBRZは開発の最終段階で、評価の意見が分かれた。それぞれの社内評価基準や評価の価値観を付き合わせると、折り合わない部分があり、それぞれのブランドで販売することや、スプリング、ダンパーの仕様の違いていどで妥協できるのであればということで最終的には両車は別設定になったわけだ。86のスプリングレートはフロントがRC :21.8N/mm G/GT:22.7N/mm 、AT全車 23.7N/mm リヤは RC/G 37.4N/mm GT 38.7N/mm)。BRZのそれはSグレードでフロントが3.0kgf/mm、リヤが3.8kgf/mm。ダンパーの減衰力もフロントは低速域で10%未満の差があると見られる。したがって、86とBRZは明らかに大きな差があると言えるほどの違いではない。