現代のエンジンにはマイクロ・コンピューターを駆使した総合電子制御システムが採用されています。1970年代にエンジンの燃料噴射システムがはじめて電子制御化(EGIと呼ばれた)され、80年代中頃にはエンジンの運転状態すべてをトータルでコントロールする総合電子制御が一般化しました。
この総合電子制御システムは、エンジンの出力性能をコントロールするのははもちろん、燃費の低減や排ガスの浄化、AT・ECUとの協調、故障診断、故障データの記憶など幅広い領域がマイコン制御されています。
ハードウェアは、最新モデルでは32bitマイコンのCPUとRAM、ROMが一体化されたフラットパッケージの1チップ・タイプが主流になってきています。さらに最近はワンタイム式からフラッシュROMタイプ化が一般化しつつあります。こうしたマイコンは通常の民生用チップと異なり、高温に耐えるなどより厳しい使用環境に耐えることができる自動車用の専用規格品が採用されています。ちなみにフラットパッケージの1チップCPUは0.2mmピッチの160ピンというような形状になり、こうしたチップの価格は決して安いものではありません。16bitのCPUと数百円のEP・ROMといったスタイルはすでに過去の物になっています。
ソフトウエアは、プログラム本体、データ部が一体化されてROMに内蔵されています。プログラムは膨大な量で、その中に多数のデータ、マップが配置されています。こうしたプログラム全体を外部から解析することは事実上不可能であるため多数のデータマップの中からチューニングするためにふさわしい抽出と選択が重要なポイントになっています。また例えば電子技術者が、プログラムやデータマップを解析したとしても、その意味するところ、つまりエンジンの設計の考え方や基礎的な実験データを融合できなければとうていチューニングを行うことはできません。また、例えプログラムやマップデータの解析資料があったとしても、決して机上でチューニングができるわけでもありません。実際にチューニングは、試作データをもとに、様々な条件のもとでテスト走行を行い、その結果をもとにしてまた新たな手を加えるという、メイク&トライの繰り返しが必要であり、こうした開発時間をじゅうぶんにとることで、はじめて優れたチューニング・データが仕上がってくるのです。
ECUの多くの制御項目の中で、出力性能や日常の運転に関する主な制御項目にはつぎのようなものがあります。
燃料供給制御
空燃比フィードバック制御
点火時期制御
過給圧制御
アイドル制御
冷却制御